相続人がいない場合の財産管理|清算人の申立て・費用と注意点
相続人がいないときの財産管理
相続財産清算人は、相続人のあることが明らかでないときに、家庭裁判所が選任する財産管理・清算の担当者です。相続人全員が相続放棄をし、結果として相続する人がいなくなった場合も対象になります。
ただし、相続人がいることは分かっていて、所在や連絡先だけが不明な場合は、別の制度を検討します。まず戸籍や相続放棄の状況、遺言、財産・負債を確認し、何のために手続きが必要なのかを整理しましょう。
相続財産清算人が必要か、最初に状況を確認しましょう
亡くなった人を「被相続人」といいます。相続財産清算人は、その人の預貯金や不動産を調べて管理し、債権者への支払いなどを行います。相続人が分からない財産を、親族や関係者が自由に処分するための制度ではありません。
「子がいない」「同居家族がいない」だけでは、相続人がいないとは判断できません。配偶者の有無を確認し、子、父母などの直系尊属、兄弟姉妹を相続順位に沿って調べます。本来相続するはずだった子や兄弟姉妹が先に亡くなっている場合などには、代わりに相続する孫やおい・めいなどがいないかも確認します。これを「代襲相続」といいます。
説明のための架空例:子全員が相続放棄した場合
配偶者のいないAさんが亡くなり、子2人が家庭裁判所で相続放棄をしたとします。Aさんの父母などが存命なら、その人たちが次の順位の相続人になる可能性があります。子2人の放棄だけで「相続人全員がいなくなった」とは判断できません。
相続放棄は、代襲相続の原因にはなりません。子が放棄したという理由で、その子である孫が代わりに相続人になるわけではありません。
相続放棄は、家庭裁判所で行う手続きです。親族間の話合いで「財産をもらわない」と決めただけの場合とは区別してください。
相続財産管理人・不在者財産管理人との違い
名前は似ていますが、目的と対象が違います。次の表を入口として、実際の事情に合う制度を確認します。
| 制度・根拠 | 主な目的と状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続財産清算人 民法第952条 | 相続人のあることが明らかでない財産を管理・清算する | 全員の相続放棄で相続する人がいなくなった場合も含む |
| 相続財産管理人 民法第897条の2 | 相続財産の保存が必要な段階で、財産を守る | 清算人の選任済みなど、利用できない場面がある |
| 不在者財産管理人 民法第25条等 | 所在不明の人自身の財産を管理する | 不在者に代わる遺産分割や不動産売却等には、裁判所の権限外行為許可が必要 |
第897条の2の管理人は、相続人が1人で単純承認した場合、相続人が複数で遺産全部の分割が済んだ場合、清算人が選任されている場合などには利用できません。また、相続人が単に話合いへ応じない場合は、遺産分割調停など別の対応を検討します。
根拠:民法第25条・第897条の2・第951条・第952条等/裁判所「不在者財産管理人選任」
2023年の改正で何が変わった?
2023年4月1日施行の改正では、相続人がいない場合の清算を担う人の名称が、従来の「相続財産管理人」から「相続財産清算人」へ変わりました。公告の手続きも見直され、相続人を探す期間と、債権者等が請求を申し出る期間を並行して進める仕組みになっています。
債務の支払い、特別縁故者への財産分与、残余財産の国庫帰属は、改正前からあった仕組みです。改正で初めて清算できるようになったわけではありません。また、保存を目的とする現行第897条の2の「相続財産管理人」とも区別します。
施行前に旧制度の管理人が選任されていた場合には、公告・清算等について経過措置があります。死亡日だけで手続きを決めず、選任時期なども確認してください。本記事は現行の清算人制度を中心に説明します。
誰が、どの家庭裁判所へ申し立てるのか
申立てができるのは利害関係人や検察官
申立人の例は、故人にお金を貸していた債権者、遺言で特定の財産を受け取る人、特別縁故者として財産分与を求める人などです。近隣住民や遠い親戚というだけで、当然に申立資格が認められるわけではありません。どのような法律上の利害関係があるかを示します。
相続放棄後も財産を占有している人などは、保存や引渡しの必要性も含めて、申立資格を確認します。
遺言がある場合は、その内容も重要です。特定の財産を与える「特定遺贈」と、全財産や財産の一定割合を与える「包括遺贈」では扱いが異なります。特に全財産の包括受遺者がいる場合は、清算人制度を利用する前提から確認が必要です。
申立先は、亡くなった人の最後の住所地が基準
不動産の所在地や相談者の住所ではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。地域の一般的な管轄は次のとおりです。
| 最後の住所 | 管轄する家庭裁判所 |
|---|---|
| 姫路市 | 神戸家庭裁判所 姫路支部 |
| 揖保郡太子町・たつの市 | 神戸家庭裁判所 龍野支部 |
実際の提出先や受付方法は、裁判所の兵庫県内の管轄区域表と申立先の案内で確認してください。
申立てに向けて確認する資料
相談の段階では、手元にある戸籍、家族関係のメモ、相続放棄の通知書、遺言書、課税明細書、通帳、借用書などが確認の助けになります。これらは相談用の資料で、正式な添付書類一式とは別です。
正式な申立てでは、一般に次の資料を確認します。相続人がいないことを調べるため、通常の相続登記より広い範囲の戸籍が必要になる場合があります。
- 申立書、財産目録、相続関係を整理した図
- 故人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍、最後の住所を示す資料
- 父母の出生から現在または死亡までの戸籍など、相続順位や放棄の状況に応じて相続人の有無を確認する戸籍
- 亡くなった子・兄弟姉妹・おい・めいなどについて、相続関係に応じて必要となる戸籍
- 相続放棄を確認できる証明書や照会回答等
- 不動産の登記事項証明書、預貯金・負債を示す資料
- 申立人の利害関係を示す借用書、遺言書、縁故関係の資料等
- 清算人の候補者を示す場合は、その人の住民票または戸籍附票
必要な戸籍の範囲や追加資料は事案により異なります。裁判所の標準的な添付書類一覧と申立先の案内を確認してください。申立前に入手できない戸籍等は、申立後に追加提出する取扱いがあります。書式は相続財産清算人選任申立書・財産目録で確認できます。
選任から清算までの流れと、公告の期間
「公告」とは、関係する人へ一定の事項を公に知らせることです。清算人の選任後は、公告と財産調査・管理などが一部並行して進みます。
- 相続関係・財産を調べ、選任を申し立てる
目的、利害関係、申立先、費用を確認して資料を提出します。必要に応じて裁判所から照会や追加提出の指示があります。
- 家庭裁判所が清算人を選任し、公告する
裁判所は選任の事実と、相続人がいるなら権利を主張すべきことを公告します。候補者を挙げても、必ずその人が選任されるわけではありません。
- 清算人が財産を管理し、法令に従って清算する
財産・負債を調べ、債権者や受遺者への公告・催告、必要な換価や支払いを進めます。換価とは、財産を売却するなどしてお金に換えることです。不動産の任意売却などには、原則として裁判所の権限外行為許可が必要です。
- 特別縁故者への分与や、残った財産の処理を行う
相続人が現れない場合は、特別縁故者の申立てや裁判所の判断を経て、共有持分等の扱いも確認し、残余財産を処理します。
2つの公告期間は、単純に足しません
裁判所による相続人への公告:6か月以上
清算人による債権者・受遺者への公告:2か月以上
この期間は、上の相続人への公告期間内に満了する必要があります。同じ日に始まるとは限りません。
実際の申出期限は、それぞれの公告に記載された日付で確認してください。相続人への公告期間の満了日は、特別縁故者の申立期限を確認する際にも重要です。
2つの公告期間は並行して進むため、手続きにかかる期間を「6か月+2か月」と単純に足すことはできません。不動産の売却や争いへの対応、特別縁故者の手続きがあれば、終了までさらに時間がかかります。6か月で全手続きが終わる保証もありません。
清算人が把握している債権者等への対応や、支払いの順位・時期にもルールがあります。公告期間を過ぎればすべての請求が消える、申立人が優先して回収できる、という制度ではありません。
相続財産清算人の費用と予納金は、何にかかる?
申立てに必要な少額の手数料と、財産の管理・清算にかかる費用は分けて考えます。「予納金」とは、必要となる費用をあらかじめ納めるお金です。
清算人の報酬や管理費用は、原則として相続財産から支払います。ただし、財産から賄えない可能性がある場合には、申立人に予納を求めることがあります。
| 費用 | 金額・確認事項 |
|---|---|
| 清算人選任の申立手数料 | 収入印紙800円分 |
| 連絡用の郵便料 | 申立先の裁判所の最新の案内で確認 |
| 選任等の官報公告料 | 裁判所の選任手続きの案内では5,582円。裁判所の指示後に納付 |
| 管理・清算の予納金 | 財産から管理費用や清算人報酬を賄えない可能性がある場合等に、裁判所が個別に判断 |
| 証明書等の実費 | 戸籍、登記事項証明書、郵送等。必要な通数・調査範囲による |
| 専門家への依頼費用 | 書類作成等を依頼する場合の報酬。業務範囲と実費を分けて見積もりで確認 |
金額は2026年10月25日時点の裁判所の選任手続案内で確認したものです。清算中の債権者向け公告、財産の維持・処分などにも費用がかかる場合があります。郵便料は神戸家庭裁判所等の郵便料・予納金案内から申立先の取扱いを確認してください。
特別縁故者として財産分与を申し立てる場合は、別の手続きとして収入印紙800円分と連絡用の郵便料等が必要です。
予納を求められた場合は、申立人がいったん納めます。必要額や最終的な負担は財産の内容と清算の見通しによって異なり、全国一律ではありません。清算人の報酬も裁判所が定めます。財産から費用を賄えるようになれば返還される場合もありますが、全額が戻るとは限りません。
予納金は、清算人報酬や管理費用に充てるためのものです。予納金と清算人報酬を、そのまま二重に加算しないよう確認しましょう。親族全員が当然に同額を負担する制度でもありません。
当サイトの相続登記の費用案内は、通常の相続登記についての料金です。本記事の清算人選任・清算費用とは対象業務が異なります。
特別縁故者・相続放棄後・不動産の注意点
特別縁故者への分与は、裁判所への申立てが必要です
特別縁故者とは、故人と生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人など、特別な関係があった人です。内縁の配偶者や介護した人などが該当することはありますが、親しかったというだけで必ず財産を受け取れるわけではありません。
申立期限は、相続人に権利を主張するよう求める公告の期間満了後3か月以内です。死亡日や清算人の選任日から数えるものではありません。
清算人選任の申立てと、特別縁故者への財産分与の申立ては別の手続きです。自分で清算人の選任を申し立てた場合も、財産分与を希望するなら、改めて期限内に申し立てる必要があります。
財産の売却や債務の支払いが終わっていなくても、申立期限は進みます。清算の終了や案内の到着を待たず、清算人を選任した家庭裁判所で申立期間を確認してください。
財産分与の対象は、清算後に残る財産です。家庭裁判所が、故人との関係などを踏まえて、分与を認めるかどうかと、その範囲を判断します。
根拠:裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与」/大阪家庭裁判所の申立手引き(PDF・申立期間と別途申立ての説明)/民法第958条の2
清算・財産分与等を経ても残る財産は、原則として国庫に帰属します。国庫帰属とは、財産が国のものになることです。ただし、共有持分には後述の特則があります(民法第959条)。
相続放棄をしても、財産の保存が必要な場合があります
相続放棄をした人が、放棄した時に相続財産を現に占有していた場合は、相続人または清算人へ引き渡すまで、自分の財産と同じ注意をもって保存する義務があります。単に別居・同居という事情だけで判断せず、実際の占有状況を確認します。
全員が放棄しても、国や自治体が直ちに空き家を管理してくれるわけではありません。清算人が選任される前の保管・管理や引渡しについても確認が必要です。根拠は民法第940条です。
共有持分が、直ちに国や他の共有者へ移るわけではありません
共有不動産の故人の持分は、相続人不存在が確定し、債権者等への清算が終わった後、特別縁故者への財産分与の対象になります。分与されず、引き継ぐ人のない持分として残ることが確定したときに、民法第255条により他の共有者に帰属します。
この順序は最高裁平成元年11月24日判決(PDF)で示されています。判決中の特別縁故者に関する条番号は改正前のものです。
また、この清算手続きを経た残余財産の国庫帰属と、相続した土地を一定の条件で国へ引き渡す「相続土地国庫帰属制度」は別の仕組みです。
相続財産清算人について、よくある質問
Q.相続人全員が放棄したら、必ず申立てをする義務がありますか?
全員が放棄したという理由だけで、放棄者全員に一律の申立義務が生じるわけではありません。ただし、現に占有していた財産の保存や、引渡しのための対応が必要になる場合があります。
Q.清算人を選任しないと、どうなりますか?
財産を管理する人や手続きの相手が定まらず、債権回収や不動産の処分が進まないことがあります。誰が、何の権利を実現するために選任を求めるのか、費用も含めて検討します。
Q.自分や、依頼した司法書士を清算人にできますか?
選任するのは家庭裁判所です。候補者を示すことができる場合でも、その人が必ず選任されるとは限りません。申立書の作成を依頼することと、清算人に就任することは別です。
Q.予納金が用意できない場合はどうすればよいですか?
財産の内容、回収・売却の見通し、予納の必要性を整理し、申立先や専門家へ相談してください。免除・分割払いや援助制度を当然に利用できるとは限りません。納付の見通しも含めて確認します。
Q.清算人が選ばれれば、売れない空き家も処分できますか?
選任されても、売却先が見つかる保証はありません。管理費や解体費などがかかる場合もあり、処分の見通しと費用を申立て前から検討することが大切です。
Q.生前に、相続人ではない人へ財産を残す準備はできますか?
遺言で財産の引継ぎ先を定める方法があります。亡くなった後の特別縁故者の申立てとは別の準備です。生前の希望を整理したい方は、遺言書作成の相談案内をご覧ください。
太子町・姫路市・たつの市で、相続関係の確認を相談したい方へ
司法書士には、戸籍による相続関係の調査、裁判所へ提出する書類の作成、不動産登記などを相談できます。ただし、家庭裁判所の手続代理や紛争の交渉代理とは区別します。争いのある請求・交渉は弁護士へ、個別の税務判断は税理士へ相談してください。
司法書士小川卓也事務所は、兵庫県揖保郡太子町鵤157番地5にあります。相続人の調査や不動産の登記内容について確認したい方は、亡くなった人との関係、分かっている相続人・財産、お困りの点をお知らせください。
まずは、分かっていることから整理しましょう
戸籍や相続放棄の資料、課税明細書など、手元にある資料が確認の助けになります。来所相談は事前予約をお願いします。
相続関係・不動産の相談予約電話:079-240-5577
電話受付:平日9:00~17:00(土日祝を除く)

