親の賃貸アパート(貸家)を相続したら?家賃や敷金の手続きと共有名義のリスク

賃貸アパート・貸家の相続

【司法書士解説】親の賃貸アパートを
相続したら?家賃や敷金の手続き

司法書士 小川卓也事務所
賃貸アパートの相続に悩む家族

親が亡くなり、ご実家のほかに「親が経営していたアパート」や「貸家(貸し出している戸建て)」を相続することになった。実は、このようなご相談は非常に多く寄せられます。

  • 「姫路市内にある賃貸アパート、誰が引き継ぐべきか兄弟で揉めている」
  • 「親の口座が凍結されて、入居者からの毎月の家賃はどうすればいいの?」
  • 「退去時の敷金返還や、水漏れの修理費用は誰が払うの?」

誰も住んでいない普通のご実家を相続するのとは違い、「賃貸物件」には現在そこに住んでいる「入居者様」がいらっしゃいます。そのため、単に建物の名義を変えるだけではなく、「大家(賃貸人)としての立場と責任」も引き継ぐことになり、特有の複雑な手続きや法律問題が発生します。

今回は、姫路・たつの・太子町など播磨地域のご家庭を数多くサポートしてきた地元の司法書士が、賃貸物件を相続した際に発生する特有の問題や、絶対にやってはいけない「共有名義」のリスクについて、分かりやすく丁寧にご説明いたします。

普通の実家とは違う!
賃貸物件の相続で発生する3つの問題

賃貸アパートや貸家を相続するということは、亡くなった親の代わりに「新しい大家さん」になるということです。不動産の権利(所有権)と一緒に、以下の3つのような「大家さんとしての責任や義務」も自動的に引き継ぐことになります。

1. 毎月の「家賃」の受け取り

親の銀行口座が凍結されると、家賃の振り込みができなくなります。誰の口座に振り込んでもらうのか、遺産の分け方が決まるまでの家賃は誰のものになるのか、すぐに決める必要があります。

2. 「敷金」の返還義務

入居時にお預かりしている「敷金」は、退去時に返す必要がある「親の借金(債務)」と同じ扱いです。物件を相続した人は、親が使ってしまって手元に敷金が残っていなくても、自分のポケットマネーから返す義務を負います。

3. 物件の「修繕義務」

「給湯器が壊れた」「雨漏りがする」といった場合、大家さんとして速やかに修理する義務があります。相続の話し合いが終わっていなくても、修理費用は発生します。

トラブルになりやすい!
遺産の話し合いが終わるまでの「家賃」は誰のもの?

賃貸物件の相続で、ご兄弟間で最も揉めやすいのが「親が亡くなってから、誰がアパートを相続するか決まるまでの間に入ってきた家賃は、一体誰のものになるのか?」という問題です。

法律上のルール(最高裁の判例)

結論から言うと、遺産分割の話し合いが終わるまでに入ってきた家賃は、「相続人全員で、法定相続分の割合に応じて分ける」ことになります。

例えば、兄と弟の2人が相続人の場合。
半年後に「兄がアパートをすべて相続する」と決まったとしても、その半年間に入ってきた家賃は「兄が半分、弟が半分」の権利を持つことになります。(さかのぼって兄1人のものにはなりません)

※実務上は、親の口座が凍結されるため、便宜上代表者(長男など)の口座を「一時的な家賃の振込先」として入居者に案内することが多いです。しかし、そこに入ったお金は代表者1人のものではないため、最終的に兄弟で精算するか、遺産分割協議書の中で「過去の家賃分を含めて誰が取得するか」をしっかりと取り決めておく必要があります。

賃貸物件を相続したらやるべき「具体的な手続き」

賃貸アパートや貸家を引き継ぐ方が決まったら、大家さんとして以下の手続きを速やかに進める必要があります。

1

不動産の名義変更(相続登記)

まずは法務局で、亡くなった親から新しい大家さん(相続人)へ、土地と建物の名義変更を行います。これは2024年から義務化されており、この登記を済ませないと、自分が真の大家であることを証明できず、家賃の滞納などのトラブル時に法的な対応ができなくなります。

2

入居者様・管理会社への「大家変更の通知」と「振込先変更」

「大家が変わったこと」と「新しい家賃の振込先(口座番号)」を書面で入居者様へ通知します。不動産管理会社に管理を委託している場合は、管理会社と新しい委託契約を結び直し、管理会社経由で入居者様へ通知してもらいます。

3

火災保険の引き継ぎ・名義変更

親が掛けていたアパートの火災保険(建物に対する保険)の名義変更手続きを行います。万が一の火災や自然災害に備え、途切れることのないよう早めの手続きが必要です。

要注意!賃貸アパートを
「兄弟の共有名義」にする恐ろしいリスク

「家賃が入ってくるなら、兄弟3人で平等に分けて受け取ろう」
そう考えて、賃貸アパートを兄弟の共有名義(3分の1ずつの権利など)にするのは、専門家の視点から言うと最も危険で、絶対におすすめできない方法です。

なぜ「共有名義」にしてはいけないのか?

  • 大規模修繕や建て替えができない
    外壁の塗装や屋根の修理など、多額の費用がかかる修繕や建て替えを行うには、原則として共有者(兄弟)の過半数や全員の同意が必要です。一人が「お金を出したくない」と反対すれば、物件はどんどんボロボロになり、入居者が離れてしまいます。
  • 物件を売却できない
    「家賃収入より維持費の方が高くなったからアパートを売ろう」と思っても、共有者全員の同意と実印がなければ売却できません。
  • 権利が細分化し、子ども世代に迷惑をかける
    兄弟の誰かが亡くなると、その権利は甥や姪に引き継がれます。数十年後には「顔も知らない親戚十数人」が大家になり、家賃の分配も修繕の話し合いも不可能になります。

賃貸物件は、経営の判断をスピーディーに行うためにも、必ず「誰か1人の単独名義」にするのが鉄則です。もし平等に分けたいのであれば、アパートを1人で相続する代わりに、自己資金から他の兄弟に現金(代償金)を支払う「代償分割」という方法などを検討しましょう。

共有名義のトラブル

姫路・播磨地域ならではの「貸家・アパート」事情

当事務所が姫路市やたつの市、太子町周辺で賃貸物件の相続のご相談を受ける中で、この地域ならではの事情が手続きや今後の経営を難しくするケースが見受けられます。

「駐車場不足」による空室リスク

完全な車社会である播磨地域において、古いアパートや貸家で「駐車場がない(あるいは1台分しかない)」物件は、入居者付けが非常に厳しくなっています。相続を機に、近隣の月極駐車場を借り上げるか、思い切って建物を解体して更地(駐車場)にするかといった「経営判断」が迫られます。

築古の「貸家」と入居者の高齢化

姫路市内の昔ながらの住宅地などでは、築40年を超えるような古い「貸家(戸建て賃貸)」を相続されるケースも多いです。長年住んでいる高齢の入居者様がいらっしゃる場合、耐震性への不安や、将来の立ち退き交渉の難しさなど、特有の配慮が必要になります。

司法書士 小川卓也

賃貸物件の相続・名義変更は、地元の司法書士にお任せください

親が残したアパートや貸家の相続は、ご自身の住まいを相続するのとは次元の違う複雑さがあります。「誰が引き継ぐべきか」「今後の経営や売却を見据えて、どう名義を整えるべきか」。
当事務所は揖保郡太子町に拠点を構え、姫路市・たつの市を含む播磨地域の不動産相続に長年携わってまいりました。

  • ご家族に最適な分割方法(代償分割など)の法的なアドバイス
  • 複雑な戸籍の収集と、法的に完璧な「遺産分割協議書」の作成
  • 賃貸経営のベースとなる「不動産の名義変更(相続登記)」の代行

アパートや貸家の相続、まずは専門家にご相談を。

ご家族の状況や物件の詳細を丁寧にお伺いし、大家さんとしての負担を軽減する最適な解決策とお手続きの費用をご提示いたします。

© 司法書士小川卓也事務所 | 兵庫県揖保郡太子町鵤157番地5

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