【加古川市の皆様へ】相続登記の義務化、放置は危険?司法書士が手続きを分かりやすく解説

1. はじめに:加古川市やその周辺で、ご実家などの相続手続きを先延ばしにしていませんか?

加古川市にお住まいで、ご家族が亡くなられ相続が発生したものの、「何から手をつければいいかわからない」「毎日が忙しく、手続きが面倒でつい後回しにしてしまっている」と感じている方はいらっしゃらないでしょうか。

これまで任意だった不動産の相続手続きですが、2024年4月1日から法律が変わり、「相続登記」が義務化されました。この変更により、多くの方が「何をすべきか」「期限はいつまでか」といった不安や疑問を抱えていらっしゃるかもしれません。

この記事は、地域に根ざす司法書士として、そうした皆様の不安を少しでも解消できるよう、相続登記の基本から義務化のポイント、そして具体的な手続きについて、専門用語をできるだけ使わずに分かりやすく解説するものです。どうぞご安心してお読みください。

2. そもそも「相続登記」とは?初心者にも分かる基本のキ

「相続登記(そうぞくとうき)」という言葉を初めて耳にした方もいらっしゃるかもしれません。

これは、とてもシンプルに言うと「不動産の所有者の名義変更手続き」のことです。

土地やご実家、マンションなどの不動産をお持ちの方が亡くなった際に、その不動産の登記簿に記録されている所有者の名前(名義)を、遺産を引き継いだ相続人の方の名前に書き換える。この手続きを「相続登記」と呼びます。

まるで、家の「名札」を新しい持ち主の名前に書き換えるようなイメージです。この手続きを法務局で行うことで、その不動産が誰のものであるかを社会的に証明することができます。

3. なぜ?いつから?相続登記「義務化」のポイントを3分で理解

これまで義務ではなかった相続登記が、なぜ義務になったのでしょうか。その背景と、知っておくべきルールを3つのポイントで解説します。

3-1. なぜ義務化されたの?背景にある「所有者不明土地問題」

相続登記が義務化された最大の理由は、全国で深刻化している「所有者不明土地問題」を解決するためです。

これまでは相続登記が任意だったため、手続きがされないまま何世代にもわたって不動産が放置されるケースが多発しました。その結果、登記簿を見ても現在の所有者が誰なのか分からなくなってしまい、公共事業(道路の建設など)や災害からの復旧工事を進めようにも、土地の所有者と連絡が取れず、計画が滞ってしまうという問題が起きていました。

このような社会的な問題を解消し、土地の利用を円滑にするために、所有者を明確にする相続登記が法律で義務付けられることになったのです。

3-2. 義務化はいつから?知っておくべき「3つの期限」

相続登記の義務化は令和6年(2024年)4月1日から始まりました。この日を境に、相続登記には法律上の期限が設けられました。特に重要な「3つの期限」を覚えておきましょう。

  • 原則の期限 2024年4月1日以降に相続が発生した場合、「ご自身が不動産を相続したことを知った日」から3年以内に相続登記を行う必要があります。
  • 過去の相続の期限 2024年4月1日より前に発生した相続についても、義務化の対象となります。過去の相続も対象という点が非常に重要です。この場合、3年間の猶予期間が設けられており、令和9年(2027年)3月31日までに相続登記を行う必要があります。
  • 遺産分割が成立した後の期限 相続人全員での話し合い(遺産分割協議)で不動産を取得する人が決まった場合は、その協議が成立した日から3年以内に、その内容に基づいた相続登記を行う必要があります。
相続の時期 期限 起算日(いつから3年?)
2024年4月1日以降の相続 3年以内 相続の開始を知り、所有権の取得を認識した日から
2024年3月31日以前の相続 2027年3月31日まで 2024年4月1日から(3年間の経過措置)
遺産分割が成立した後 3年以内 遺産分割協議が成立した日から

3-3. 期限を過ぎるとどうなる?「10万円以下の過料」について

もし、正当な理由なく期限内に相続登記を行わなかった場合、「10万円以下の過料(かりょう)」という行政上の罰則が科される可能性があります。

ただし、この過料は「3年の期限が過ぎたらすぐに科される」というものではありません。法務局から「登記をしてください」という催告(さいこく)があったにもかかわらず、それに応じないといった場合に、裁判所の判断を経て科されることになります。過度に不安になる必要はありませんが、法律上の義務として定められたルールであることは認識しておくことが大切です。

4. 相続登記をしないと起こる、過料以外の具体的な4つのリスク

過料の他にも、相続登記を放置することにはさまざまなデメリットやリスクが伴います。

  1. 権利関係がどんどん複雑になる 相続登記をしないまま年月が経ち、相続人の方が亡くなると、その方の相続人(例えば、配偶者やお子さん、甥や姪など)が新たに関係者となります(これを数次相続といいます)。最初は数人だった関係者が、ネズミ算式に数十人に増えてしまうことも珍しくありません。関係者が増えれば増えるほど、全員の合意を得て手続きを進めることが極めて困難になります。
  2. 不動産を売りたいときに売れない 亡くなった方の名義のままでは、その不動産を売却したり、家を建てるために金融機関から融資を受ける際の担保に設定したりすることはできません。これらの手続きを行うには、前提として必ず相続登記を完了させておく必要があります。
  3. 他の相続人の借金で差し押さえられるかも 例えば、相続人の一人が多額の借金を抱えてしまった場合、その相続人が持つ「法定相続分」の権利が債権者によって差し押さえられ、競売にかけられてしまうリスクがあります。最悪の場合、見ず知らずの第三者が不動産の権利の一部を持つことになり、トラブルの原因となりかねません。
  4. 加古川市でも他人事ではない「空き家問題」 相続登記の放置は、管理が行き届かない空き家を生み出す一因となります。「加古川市総合計画」によると、本市でも人口減少・高齢化が進んでおり、平成30年(2018年)時点での空き家率は10.7%に達しています。適切に管理されていない空き家は、景観の悪化や防犯・防災上のリスクとなり、地域社会全体の問題につながります。大切な不動産を負の遺産にしないためにも、所有者を明確にしておくことが重要です。

5. 相続登記、自分でやる?司法書士に頼む?

相続登記の手続きはご自身で行うことも、専門家である司法書士に依頼することも可能です。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

5-1. 自分で手続きする場合のメリット・デメリット

  • メリット:費用を抑えられる 最大のメリットは、司法書士に支払う報酬がかからない点です。登録免許税(不動産の評価額に応じてかかる税金)や戸籍謄本などの取得費用といった実費のみで手続きを済ませることができます。
  • デメリット:時間と手間がかかり、不備のリスクがある 相続登記には、亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本をはじめ、多くの書類を収集・作成する必要があります。役所は平日の日中しか開いておらず、書類の収集だけで大変な時間がかかることもあります。また、申請書に不備があると法務局から修正を指示され、何度も足を運ぶことになりかねません。

5-2. 司法書士に依頼した方が安心なケース

以下のような場合は、専門家である司法書士に依頼することをおすすめします。

  • 平日は仕事で役所や法務局に行く時間が取れない方
  • 相続人の数が多かったり、連絡が取りづらい親族がいたりするケース
  • 数世代にわたって相続登記がされておらず、権利関係が複雑になっているケース
  • 書類の収集や作成が苦手で、手続きを確実かつスムーズに進めたい方

専門家に任せることで、時間的・精神的な負担を大幅に軽減し、正確な手続きを安心して完了させることができます。

6. すぐに登記できない時の救済策「相続人申告登記」とは?

「相続人同士の話し合いがまとまらない」「相続人が多くて、すぐに書類が揃えられない」など、様々な事情で3年以内に相続登記を完了するのが難しい場合もあるでしょう。

そのようなケースのために、「相続人申告登記」という新しい制度が設けられました。

これは、法務局に対し「自分がこの不動産の相続人の一人です」と申し出ることで、ひとまず相続登記の義務を果たしたとみなしてもらえる、いわば「応急措置」のような手続きです。

この手続きの重要な点は、以下の通りです。

  • 相続人の一人から単独で申し出ができます。
  • あくまで義務を一時的に履行するためのもので、不動産の所有権が移転するわけではありません。そのため、この登記だけでは不動産の売却はできません。
  • この手続きの後、遺産分割協議がまとまったら、その日から3年以内に、改めて正式な相続登記を行う必要があります。

すぐに手続きを進めるのが難しい場合の選択肢として、覚えておくとよいでしょう。

7.関係官署や法務局の管轄

加古川市役所の戸籍や評価証明書の取得に関する情報

戸籍の証明書の取得について

加古川市では、戸籍謄本等の交付申請をオンライン申請(スマート申請)、窓口、または郵送で行うことができます。

証明書の種類 手数料(1通あたり) 取得先/請求先 申請方法の特記事項
戸籍謄本・抄本 450円 本籍地の市区町村 オンライン申請を利用すると、手数料が一律150円引き下げられます。
除籍・改製原戸籍 750円 加古川市役所市民課(新館1階)、各市民センター、東加古川市民総合サービスプラザ 申請できるのは、本人、その配偶者、直系尊属(親や祖父母)、直系卑属(子や孫)、または代理人など限定された者のみです。
戸籍の附票、身分証明書 300円
  • 広域交付の取り扱い: 令和6年3月1日からは、本籍地が加古川市以外の方も戸籍証明書(戸籍全部事項証明書のみ)を、加古川市役所の窓口で取得できるようになりました。ただし、各市民センターと東加古川市民総合サービスプラザでは、広域交付として取り扱うのは戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)のみです。
  • 郵送申請: 郵送で申請する場合は、申請書、郵便局の定額小為替(手数料分)、返信用封筒(切手を貼付し宛名記入)、申請者の本人確認書類のコピーを、加古川市役所市民課総合窓口係宛てに送付します。返送先は申請者の住民票の住所に限られます。

評価証明書(固定資産証明書)の取得について

評価証明書は、固定資産税の課税対象となる土地・家屋の評価額を証明するもので、法務局への提出などに使用されます。

証明書の種類 手数料(1棟1筆ごと) 取得先/申請場所 申請方法の特記事項
評価証明書 窓口・郵送:300円 加古川市役所・税務部総合受付(新館2階) オンライン申請では、手数料が通常の半額の150円となります。
公課金証明書 オンライン:150円 加古川市役所・市民課総合窓口(新館1階)、各市民センター(一部除く)、東加古川市民総合サービスプラザ オンライン申請は、24時間365日スマートフォンやパソコンから可能です(申請者本人のみ利用可)。
土地家屋名寄帳 1名義ごとに300円 (オンライン150円) 登録免許税を算定する際の不動産の価額は、通常、市区町村が管理する固定資産課税台帳の価格(固定資産課税明細書や課税明細書に記載)を使用します。

加古川市の不動産登記の管轄について

不動産登記の申請は、その申請対象の不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に対して行う必要があります。

項目 詳細 典拠
管轄法務局名 神戸地方法務局 加古川支局(かこがわしきょく)
所在地 〒675-0017 加古川市野口町良野1749番地
管轄区域 加古川市高砂市加古郡(稲美町、播磨町)
主な取扱事務 不動産登記、商業・法人登記(証明書交付・印鑑に関する事務のみ)、供託、国籍、遺言書保管、法定相続情報、人権など

相続登記を申請する場合、その不動産の所在地が加古川市、高砂市、稲美町、または播磨町内であれば、神戸地方法務局加古川支局が管轄となります。

登記に関連するポイント

  • 相続登記の義務化: 令和6年4月1日から相続登記が義務化されています。相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です。これには、施行日以前に開始した相続も含まれ、その場合、原則として令和9年3月31日が期限となります。
  • 評価証明書の利用: 不動産登記の申請には、登録免許税の計算のために固定資産税の評価証明書が必要な書類の一つとなります。
  • 戸籍の利用: 相続登記の申請には、被相続人の出生から死亡までの戸籍の証明書や相続人全員の戸籍の証明書などが必要です。これらの戸籍の証明書は、原則として本籍のある市区町村に請求します。

9. まとめ:相続登記のお悩みは、一人で抱え込まずにご相談ください

この記事では、2024年4月1日から始まった相続登記の義務化について解説しました。

  • 相続登記は「不動産の名義変更」のことで、法律上の義務になりました。
  • 原則として「相続を知った日から3年以内」の期限があり、過去の相続も対象です。
  • 放置すると過料だけでなく、権利関係の複雑化や売却できないなど、様々なリスクがあります。
  • ご自身での手続きが難しい場合は、司法書士に依頼することで安心して進められます。

大切なご家族から受け継いだ不動産の手続きは、分からないことばかりで不安に感じるのが当然です。しかし、そのお悩みを一人で抱え込む必要はありません。

「まずは何から始めればいいか、話だけでも聞いてみたい」という段階でも結構です。私たち地域密着の司法書士事務所は、加古川市・揖保郡太子町の皆様の身近な相談相手として、お力になりたいと考えています。初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。