【2024年改正】相続登記義務化のガイド

1.相続登記義務化とは

2024年、日本における不動産の相続に関する大きな変更が実施されます。この改革の核心は「相続登記義務化」と呼ばれ、不動産の所有権移転に関する新たな規制を導入するものです。この記事では、相続登記義務化の概要から、その背景、法的枠組み、そして個々の国民にどのような影響を与えるのかについて詳しく解説します。

相続登記義務化の背景

長年、日本では不動産の相続において登記の更新が適切に行われず、所有権の不明瞭な土地や建物が増加してきました。この問題を解決するため、国は相続が発生した際に不動産の登記を義務付ける法律を制定しました。これにより、不動産の正確な所有者情報を登記簿上に明記し、土地や建物の所有権に関するトラブルを未然に防ぐことを目的としています。

法的枠組み

相続登記義務化は、不動産登記法の一部を改正する形で導入されます。この改正により、相続が発生した際には、相続人は一定期間内に不動産の相続登記を行うことが法的に義務付けられます。登記を怠った場合のペナルティも設けられ、相続人の責任と認識が高まることが予想されます。

相続登記とは何か?

相続登記とは、不動産の所有者が死亡した際に、その不動産を相続する人の名前に所有権を変更登記する手続きのことを指します。この手続きには、遺産分割協議書や死亡証明書などの書類が必要になります。相続登記を行うことで、不動産の所有権が明確になり、将来的なトラブルを防ぐことができます。

相続登記義務化は、不動産所有権の明確化を促し、相続に関するトラブルを減少させるための重要な法改正です。2024年の施行に向けて、不動産を所有するすべての人々は、この新たな制度について正しく理解し、必要な準備を進めておくことが求められます。相続登記について不明な点がある場合は、早めに相談することをお勧めします。

2.相続登記の期限

続いて、相続登記の具体的な期限についてご説明します。

起算日

相続または遺言によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。ポイントとしては、起算点は相続開始日ではなく、「不動産を相続または遺贈によって取得したことを知った日」となる点です。例えば「ご自身が相続人であることは知っているけど不動産があることを知らなかった」という状態では相続登記の義務はありません。不動産の存在を具体的に認識してから3年以内に相続登記をすれば良い、ということになります。

令和6年4月1日以前の相続について

令和6年4月1日以前に発生した相続についても相続登記の義務はあります。但し、この場合は、「相続などで不動産の所有権取得を知った日」または「令和6年4月1日」のどちらか遅い日が起算日となります。この起算日から3年以内に相続登記をする必要があります。令和6年4月1日以前に相続が発生している場合は、令和9年4月1日までに相続登記をすれば良いということになります。

3.過料について

相続登記の義務に違反した場合にはペナルティがあります。

「正当な理由」が無いのに相続登記をしなかった場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。

過料の金額は、裁判所が決定します。

正当な理由について

3年以上経過していても、「正当な理由」があれば、過料は科されないということになります。

正当な理由の具体例は、いくつかは例示されています。

(1) 相続人が極めて多数に上り、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
(2) 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われている場合
(3) 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
(4) DV等の被害者である場合
(5) 経済的に困窮しているために、登記費用を負担する能力がない場合

これらの例に当てはまらなくても個別具体的な事情によっては正当な理由があると認められる場合があります。

 

4.よくある質問(Q&A)

Q1.親が所有していた不動産について遺産分割の結果、私の兄が相続することになりました。兄は相続登記をしていません。私も義務違反になりますか?
A1.相続登記の義務は、不動産を取得した人が負います。不動産を取得しない人は相続登記の義務はありません。
Q2.遺産分割協議がまとまらない場合はどのようにすればよいのでしょうか?
A2.法定相続分通りに登記する、または相続人申告登記を行うことになります。
Q3.相続人申告登記は、相続人のうちの誰か一人がすればよいのでしょうか?
A3.相続人申告登記は、申出をした相続人についてのみ、相続登記の義務を履行したものとみなされます。申出をしていない他の相続人には過料が科される可能性があります。
Q4.相続放棄した場合はどうなりますか?
A4.家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うと相続人ではなくなるため、相続登記の義務もなくなります。
Q5.遺言書がある場合はどうなりますか?
A5.遺言により不動産を取得した相続人のみが相続登記の義務を負います。
Q6.3年以上経過して相続登記の義務違反の状態です。法務局や裁判所からは何の通知も来ていません。相続登記をすると過料が科されますか?
A6.通知が来る前なら3年以上経過後に相続登記しても過料は科されません。

 

5.まとめ

相続登記の申請義務の有無や期限については、具体的なケースごとに判断されることになります。

ただ、どのようなケースであっても、相続開始から3年以内(令和6年4月1日以前の相続については令和9年4月1日まで)に相続登記をすれば過料が科されることはありません。

不動産について相続が発生した場合は、できるだけ速やかにどなたが不動産を承継するのか相続人間で話し合って、相続登記をすることをお勧めします。

相続登記に関するご相談なら司法書士にご相談ください。