遺言のデジタル化が進む!公正証書遺言の最新動向

近年、日本における遺言制度はデジタル化の波を受け、大きな変革期を迎えています。特に、公正証書遺言のデジタル化に関する動向は、多くの注目を集めています。本記事では、公正証書遺言のデジタル化の背景、具体的な改正内容、そして今後の展望について詳しく解説します。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公証人が遺言者の意思を確認し、公証役場で作成される遺言書のことを指します。この方式は、公証人という第三者が関与するため、遺言の内容や作成過程の信頼性が高く、遺言書の偽造や紛失のリスクが低いとされています。また、家庭裁判所での検認手続きが不要であることも大きなメリットです。

デジタル化の背景

従来、公正証書遺言の作成には、公証役場への出頭や書面での手続きが必須でした。しかし、デジタル技術の進展や社会全体のデジタル化推進の流れを受け、これらの手続きのオンライン化・電子化が求められるようになりました。特に、高齢者や遠隔地に住む方々にとって、対面での手続きは大きな負担となっており、デジタル化による利便性の向上が期待されています。

公正証書遺言のデジタル化に向けた法改正

2023年6月6日、民事関係手続等における情報通信技術の活用等を推進するための関係法律の整備に関する法律(令和5年法律第53号)が成立しました。この改正により、公正証書遺言のデジタル化が具体的に進められることとなりました。主な改正内容は以下のとおりです。

  1. オンラインでの嘱託(申請):遺言者は、インターネットを利用して電子署名を付した上で、公正証書の作成を申請できるようになります。

  2. ウェブ会議の活用:公証人との手続きは、遺言者の希望と公証人の判断により、ウェブ会議を通じて行うことが可能となります。

  3. 電子データでの原本作成・保存:公正証書の原本は、電子データとして作成・保存されることが原則となります。

  4. 電子データでの証明書提供:遺言者の選択により、正本や謄本といった証明書も電子データで受け取ることができます。

これらの改正により、遺言者は自宅にいながら公正証書遺言の作成手続きを完了できるようになり、手続きの負担が大幅に軽減されると期待されています。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00336.html

施行時期と今後の展望

改正法の施行日は、2023年6月14日から2年6ヶ月以内と定められており、具体的な施行日は政令で定められる予定です。したがって、遅くとも2025年12月13日までには施行される見込みです。

さらに、法務省は自筆証書遺言のデジタル化についても検討を進めています。2024年4月16日には、法制審議会民法(遺言関係)部会が設置され、デジタル技術を活用した新たな遺言方式の導入が議論されています。具体的には、デジタルタッチペンやワープロソフトを用いた遺言書作成、ウェブサイト上での遺言情報入力などが検討対象となっています。

デジタル化のメリットと課題

公正証書遺言のデジタル化には、多くのメリットが期待されます。例えば、手続きの簡素化や時間・費用の削減、遠隔地からのアクセスの容易さなどです。一方で、デジタル技術を活用する際のセキュリティ確保や、高齢者へのデジタルデバイド(情報格差)への対応といった課題も存在します。これらの課題に対しては、適切なサポート体制の構築や、デジタルリテラシー向上のための教育・啓発活動が求められます。

まとめ

公正証書遺言のデジタル化は、遺言制度の利便性を大きく向上させる重要な一歩です。法改正により、オンラインでの手続きが可能となり、多くの人々にとって遺言作成が身近なものとなるでしょう。今後も、デジタル技術の進展とともに、遺言制度のさらなる充実が期待されます。