【相談事例】相続人の一人が夜逃げして連絡が取れません。名義変更は諦めるしかないでしょうか?
先日、父が他界しました。相続人は長男である私と、弟の二人です。父の名義になっている実家の土地と建物を私の名義に変えたいと考えています。
ところが、弟は数年前に借金トラブルが原因で夜逃げ同然に姿を消してしまいました。住民票上の住所を調べて手紙を送ってみましたが、「宛先不明」で戻ってきてしまいます。携帯電話も解約されているようで、連絡を取る手段が全くありません。
相続の手続きには相続人全員のハンコが必要だと聞きました。弟が見つからない以上、名義変更はもう諦めるしかないのでしょうか?
司法書士からの回答・解説
大切なご家族を亡くされた中、さらに連絡の取れないご親族の問題を抱え、大変不安な思いをされていることとお察しいたします。
結論から申し上げますと、相続人の一人が行方不明であっても、法的な手続きを踏むことで不動産の名義変更を完了させることは可能です。
不動産の相続登記(名義変更)を行うためには、原則として相続人全員で「誰がどの財産をもらうか」を話し合う「遺産分割協議」を行い、全員が署名・実印での押印をする必要があります。
今回のように、一人が「夜逃げ」などで生死不明、あるいは連絡が一切つかない場合、そのままでは協議を進めることができません。しかし、法律にはこのような状況を解決するための「不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)」という制度が用意されています。
行方不明者がいる場合の解決ステップ
当事務所では、以下のような流れで手続きのサポートを行っております。
職権による詳細な住所調査
まずは、司法書士が職権で「戸籍の附票(こせきのふひょう)」などを取得し、住民票上の住所だけでなく、過去の住所履歴から現在の居場所の手掛かりがないか調査します。単なる住所変更の未届けであれば、これで連絡がつくケースもございます。
不在者財産管理人の選任申立て
調査を尽くしても行方が分からない場合、家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の選任を申し立てます。これは、行方不明である弟さんに代わって、その財産を管理する人(弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多いです)を裁判所に決めてもらう手続きです。
裁判所の許可を得て遺産分割を行う
選任された管理人が、弟さんの代理人として、あなたと遺産分割の話し合いを行います。裁判所の許可を得ることで、行方不明の弟さんがいても、法的有効な遺産分割協議書を作成し、不動産の名義変更を行うことができるようになります。
放置は「空き家問題」や「義務化」の違反につながります
「連絡が取れないから」と放置してしまうと、将来その不動産を売りたくなったときに売却ができず、また2024年4月から始まった「相続登記の義務化」による過料(罰金)の対象になってしまうリスクもあります。
裁判所が関わる手続きになるため、時間はかかりますが、確実に解決できる方法です。
「どこにいるか分からない相続人がいる」という状況は、専門的な対応が不可欠です。
まずは現状を整理し、どのような調査や手続きが必要か一緒に考えていきましょう。
お困りの際は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

