【相談事例】遺言書を偽造した相続人がいます。「相続欠格」の証明はどうすればいいですか?

兵庫県姫路市飾磨区のご相談

亡くなった父の遺産を整理していたところ、兄弟の一人が自分に有利な内容の「遺言書」を勝手に作成して隠していたことが分かりました。筆跡や印鑑が明らかに不自然で、問い詰めたところ偽造を認めました。

親戚からは「遺言を偽造するような人間は相続人になれない(相続欠格)」と聞いたのですが、法務局で不動産の名義変更(相続登記)をする際に、その兄弟を除いて手続きすることはできるのでしょうか。また、その人が相続権を失ったことを証明するためには、どのような書類が必要になりますか?

司法書士からの回答

身内の方による遺言書の偽造という、非常にショッキングな出来事に直面され、心労お察しいたします。
まず結論から申し上げますと、遺言書を偽造した相続人は、法律上「相続欠格(そうぞくけっかく)」となり、その相続において一切の相続権を失います。

相続欠格とは?
民法第891条に定められた制度です。遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿など、相続において不正な利益を得ようとする重大な違法行為をした場合、特別な手続き(家庭裁判所への申し立て等)を経ずとも、当然に相続資格を失うという非常に厳しいペナルティです。

この「相続欠格」となった人を除いて相続登記を行うことは可能ですが、法務局(登記所)に対しては、その人が間違いなく欠格者であることを客観的な書類で証明しなければなりません。

法務局へ提出する「証明書類」のパターン

相続欠格を理由とした登記手続きでは、主に以下のいずれかの書類が必要となります。

  • 1 確定判決の謄本 偽造を認めていない場合や、争いがある場合に必要です。「当該相続人が相続欠格者に該当すること」を確認する訴訟や、遺言無効確認訴訟などの判決書(および確定証明書)を法務局に提出します。これが最も強力な証明書類となります。
  • 2 相続欠格を認める「申述書」 本人が偽造を認めている場合、本人に「私は遺言書を偽造したため、民法891条の規定により相続欠格者に該当することを認めます」という内容の書面に署名し、実印を押印してもらいます。これに印鑑証明書を添えて提出することで、登記が受理される運用があります。

実務上の大きなハードル

今回のケースで難しいのは、「偽造をした本人が、素直に申述書を書き、実印を押してくれるか」という点です。もし本人が協力しない(印鑑を押さない)場合は、裁判手続きを通じて解決を図るしかありません。

また、偽造された遺言書があることで、通常の遺産分割協議自体が有効に成立しないリスクもあります。まずはその遺言書が法的に無効であることを確定させ、その上で欠格者を除いた他の相続人で手続きを進めるという、慎重な段取りが求められます。

相続欠格が絡む名義変更は、通常の相続登記とは必要書類も難易度も全く異なります。