【相談事例】刑務所に服役中の兄弟がいます。遺産分割協議書への署名や印鑑証明書はどうなりますか?

兵庫県揖保郡太子町のご相談

父が亡くなり、実家の土地と建物の相続手続き(名義変更)を進めようとしています。相続人は私と兄の2人なのですが、実は現在、兄は刑務所に服役しています。

名義変更には、相続人全員の「実印」を押した遺産分割協議書と「印鑑証明書」が必要だと聞きました。しかし、兄は実印を持っておらず、刑務所の中にいるため役所に印鑑証明書を取りに行くこともできません。このような状況で、相続手続きを完了させることは可能なのでしょうか?

司法書士からの回答

ご親族が服役中というご事情があり、今後の手続きに大変ご不安を感じておられることと思います。
結論から申し上げますと、お兄様が実印や印鑑証明書を用意できない状況であっても、相続登記(名義変更)の手続きを進めることは可能です。

刑務所に服役している方であっても、法律上の相続人であることに変わりはありません。したがって、お兄様を除外して遺産分割協議を行うことはできず、必ず手続きに関与していただく必要があります。
役所で印鑑証明書が取得できない場合、法務局での登記手続きにおいては、印鑑証明書に代わる特別な証明書を利用します。

「実印・印鑑証明書」の代わりになる手続きとは?

遺産分割協議書に実印を押す代わりに、本人が署名(サイン)をし、「拇印(ぼいん:指に朱肉をつけて押す指印)」を押します。
そして、刑務所の所長(施設長)に、「この署名と拇印は、間違いなく当施設に収容されている本人が目の前で行ったものです」という「奥書証明(おくがきしょうめい)」を書類に記載してもらいます。これが印鑑証明書の代わりとして法的に認められます。

具体的な手続きの流れ

服役中の方がいる場合の遺産分割手続きは、通常、以下のような手順で進めます。

  • 1 遺産分割協議書の作成と刑務所への送付

    まず、誰がどの財産を相続するかを決めた「遺産分割協議書」を作成します。そして、その書類をお兄様が収容されている刑務所へ郵送、または差し入れます。

  • 2 刑務所内での面接・署名・拇印の押印

    お兄様が刑務所の職員立ち会いのもとで書類の内容を確認し、協議書に署名をして拇印を押します。

  • 3 刑務所長による「奥書証明」の作成

    刑務所の所長が、その署名と拇印がお兄様本人のものであることを証明する一文(奥書証明)を追記し、刑務所の公印を押します。

  • 4 書類の返送と法務局への登記申請

    奥書証明がされた遺産分割協議書が手元に戻ってきたら、ご相談者様など他の相続人の方も実印を押し、全員分の書類を揃えて法務局へ相続登記を申請します。

手続きにおける注意点

刑務所を通じた書類のやり取りは、通常の手続きよりも日数がかかることが一般的です。あらかじめ手紙や面会を通じて、「実家は誰が相続するのか」など、遺産分割の内容についてお兄様の同意を得ておくと、その後の書類のやり取りがスムーズになります。