【相談事例】実家前の私道がご近所との「共有名義」です。これも相続登記しないと家は売れませんか?
お住まい:兵庫県姫路市余部区
状況:
亡くなった父が住んでいた実家(土地・建物)を相続して、売却しようと考えています。不動産会社に査定を依頼したところ、「家の前の道路(私道)も、ご近所の方々と10人以上での共有名義(持分)になっているようです」と言われました。
私としては、実家の土地と建物だけ名義変更して売却できればよいのですが、このわずかな持分しかない「私道」についても、わざわざ相続登記の手続きをしなければ家は売れないのでしょうか?
司法書士からの回答・解説
ご実家の整理やお手続きなど、ご心労もいかばかりかと存じます。
結論から申し上げますと、私道の持分(共有名義となっている権利)についても、必ず相続登記(名義変更)をする必要があります。実家の土地・建物だけを相続登記して売却することは、事実上できません。
たとえ「道路」として使われており、ご自身の持分が「10分の1」などわずかなものであっても、法律上は立派な不動産の権利(所有権)です。亡くなったお父様の名義のままでは、その権利を買主の方へ引き渡す(所有権移転登記をする)ことができないルールになっています。
もし、私道の持分をそのままにして実家の土地・建物だけを買主に売却してしまった場合、後になって大きなトラブルになる可能性があります。
買主が家を建て替える際や、水道管・ガス管の引き込み工事をする際に、道路の所有者(持分を持っている人)であることが求められるケースが多いからです。そのため、不動産会社も「私道の持分も含めて、すべて買主に名義変更すること」を売却の必須条件とします。
私道の「登記漏れ」を防ぐための手続き
実は、相続登記の手続きにおいて「私道の持分の手続きをうっかり漏らしてしまう」というケースは非常に多く発生します。
なぜなら、公衆用道路となっている私道は固定資産税が「非課税」であることが多く、毎年春に市役所から届く「固定資産税の納税通知書」に記載されていないからです。ご家族も私道を持っていることに気づかないまま、手続きを進めてしまうのです。
このような登記漏れを防ぐため、私道がある場合の手続きは次のように進めます。
- 名寄帳(なよせちょう)の取得:
市役所で「名寄帳」という書類を取得します。これには、非課税となっている道路の持分など、お父様がその市内に持っているすべての不動産が記載されています。姫路市内の不動産であれば姫路市役所の各支所やサービスセンターでも取得できます(相続人が取得する場合は原則として相続関係を証明する戸籍類が必要となります)。 - 法務局での公図・登記簿の調査:
実家周辺の地図(公図)を法務局で取得し、道路部分の地番を割り出して、登記簿(登記事項証明書)でお父様の名義が入っているか正確に確認します。 - 実家とまとめて遺産分割協議・登記申請:
実家の土地・建物と、私道の持分をすべてまとめて遺産分割協議書に記載し、法務局へ一括して相続登記の申請を行います。
なお、令和6年4月1日から相続登記が義務化されましたが、この「私道の持分」についても義務化の対象となります。放置すると過料(罰金のようなもの)の対象になる可能性もあるため、早めの手続きをおすすめします。
私道などの共有持分が含まれる相続登記は、対象となる不動産を正確に調査して漏れなく拾い上げる、専門的なノウハウが必要です。
「実家をスムーズに売却したい」「他にも把握していない不動産がないか不安だ」という場合は、面倒な調査や法務局への手続きをすべて代行できる、当事務所にご相談ください。

