【相談事例】父の介護を一人で担いました。何もしていない兄と同じ相続割合になるのでしょうか?
先日、同居していた父が亡くなりました。相続人は私と、遠方に住んでいる兄の2人です。
私は父が倒れてからの数年間、仕事を辞めて付きっきりで在宅介護をしてきました。夜中の下の世話から病院の付き添いまで、本当に心身ともに限界ギリギリの日々でした。一方の兄は、盆と正月にお見舞いに来る程度で、介護の負担は一切していません。
それなのに、いざ相続の話になると、兄は「法律上は半分ずつ(法定相続分)だから、実家も預金もきっちり半分に分けよう」と言ってきます。私としては、これまでの自分の苦労が全く考慮されないことにどうしても納得がいきません。私の相続分を増やすことはできないのでしょうか?
司法書士からの回答
長年にわたるお父様の介護、本当にお疲れ様でした。お仕事を辞めてまで献身的に尽くされたご苦労は、計り知れないものがあったとお察しいたします。
遠方にいるご兄弟と全く同じ割合で財産を分けると言われると、感情的に納得がいかないのは当然のことです。
法律上、このような特別な貢献をした相続人の相続分を増やす制度として「寄与分(きよぶん)」というものがあります。
しかし、結論から申し上げますと、家庭裁判所等でこの「寄与分」が法的に認められるハードルは、一般の方が想像する以上に非常に高いのが実情です。
民法では、家族間にはもともと「互いに助け合う義務(扶養義務)」があるとされています。そのため、単に「長年介護をした」「身の回りの世話をした」という程度では、「家族としての通常の助け合いの範囲内」とみなされてしまいます。
寄与分が認められるには、「無報酬で長期間にわたり、お父様の財産が減るのを防いだ(または財産を増やした)という明確な事実と証拠」が必要です。
寄与分を主張するためのポイント
もし、ご自身のご苦労を「寄与分」として主張する場合、以下のような客観的な証拠が必要になってきます。
- 介護の記録: いつ、どのような介護を行ったかの詳細なメモや日記
- 医療・介護の記録: 介護保険の要介護認定の記録、ケアマネージャーの記録など
- 財産維持の証明: 「自分が介護をしたおかげで、本来ならかかるはずだった高額な施設入所費用や家政婦・ヘルパーの費用がいくら浮いたか」を具体的に計算できる資料
※「仕事を辞めて介護をした」という精神的・肉体的な苦労そのものは、直接的に「お父様の財産を増やした」とは評価されにくいため、裁判所では寄与分として認められにくい傾向があります。
解決へ向けたアドバイスと手続き
法律上の寄与分が認められるハードルは高いとはいえ、まずは「当事者同士の話し合い(遺産分割協議)」で解決を目指すのが一番の近道です。
遺産分割協議では、相続人全員が合意さえすれば、どのような割合で財産を分けても法律上問題ありません。ご相談者様のこれまでの苦労を示す資料(介護ノートや領収書など)をお兄様に見せ、冷静に「これだけのお金と労力がかかっているから、少し多めにもらいたい」と事情を説明し、納得してもらうことが最も円満な解決方法です。
もしお兄様が納得してくださり、財産の分け方で合意ができれば、その内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きを進めることができます。
当事務所では、合意内容を間違いなく書類にする「遺産分割協議書の作成」や、その後の「相続登記(名義変更)」のお手続きをサポートしております。
「どのように話を進めればいいか分からない」「まずは状況を整理したい」という場合は、どのような道筋が考えられるか法的な視点からアドバイスさせていただきますので、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。

