【相談事例】相続人の中に認知症で施設に入っている親族がいます。どうやって手続きを進めればよいですか?

ご相談者の状況(姫路市飾磨区在住・50代女性)

  • 数ヶ月前に父親が他界し、実家の土地と建物が残された。
  • 相続人は、母、長男(兄)、長女(相談者)の3人。
  • 母は重度の認知症で、現在姫路市内の介護施設に入所中。意思疎通が難しい状態。
  • 実家は同居していた長男(兄)の単独名義に変更したいが、母が書類の内容を理解して実印を押すことができない。

司法書士からの回答・解説

結論から申し上げますと、お母様が認知症で判断能力がない状態のまま、遺産分割協議(誰がどの財産を引き継ぐかの話し合い)を行うことはできません。

法律上、遺産の分け方を決めるには相続人全員の合意と署名・実印の押印が必要ですが、これには「自分が何に同意しているのか」を理解できる能力(意思能力)が求められます。意思能力がない状態で行われた遺産分割協議は無効となってしまいます。そのため、施設に入所されているお母様に代わって手続きを行う人を法的に選任する必要があります。

具体的な解決方法・手続きのステップ

このようなケースでは、主に以下の手順で手続きを進めます。

1. 成年後見制度の利用を申し立てる
家庭裁判所に申し立てを行い、お母様の財産を守り、代わって法律行為を行う「成年後見人」を選任してもらいます。ご親族が候補者となることもできますが、裁判所の判断により司法書士や弁護士などの専門家が選任されるケースもあります。
2. 成年後見人を交えて遺産分割協議を行う
選任された成年後見人が、お母様の代理人として遺産分割協議に参加します。この際、成年後見人はお母様の財産(法定相続分)を減らさないように保護する義務があるため、「お母様は何も相続せず、長男がすべて相続する」といった内容には原則として同意できません。お母様の権利を確保した上で、代償金を支払うなどの調整が必要になる場合があります。
3. 法務局で相続登記(名義変更)を行う
成年後見人が署名・押印した遺産分割協議書と、成年後見人の印鑑証明書などを揃えて、管轄の法務局へ相続登記を申請します。

まとめ・当事務所にご相談ください

認知症のご家族がいる場合の相続手続きは、家庭裁判所での手続き(成年後見人の選任)が絡むため、通常の相続登記よりも時間と専門的な知識が必要になります。「何から手をつければいいか分からない」「裁判所に出す書類の書き方が不安だ」という方は、当事務所にご相談ください。ご家族の状況に合わせた適切な進め方をサポートいたします。