【相談事例】私と未成年の子どもで、法定相続分通りに半々で共有名義にする場合も、特別代理人は必要ですか?

ご相談内容

お住まい:兵庫県姫路市網干区
状況:
夫が急死し、残された相続人は妻である私と、高校生の息子(未成年)の2人だけです。

インターネットで調べたところ、「親と未成年の子どもが相続人になる場合、家庭裁判所で特別代理人を選任しないと名義変更できない」という記事を読みました。
しかし今回は、誰がどれだけもらうか話し合うつもりはなく、法律で決められた割合(法定相続分)の通りに「私2分の1、息子2分の1」で自宅を共有名義にしようと思っています。このように法定相続分通りに分ける場合でも、わざわざ家庭裁判所で特別代理人を立てる必要があるのでしょうか?

司法書士からの回答・解説

突然のご主人様のご不幸、心よりお悔やみ申し上げます。今後の手続き等について、ご不安なことも多いかと思います。

結論から申し上げますと、「遺産分割協議(話し合い)を行わず、法律で定められた割合(法定相続分)で相続登記をする」だけであれば、家庭裁判所での特別代理人の選任は不要です。親権者であるお母様が、お子様の法定代理人として、そのまま法務局へ相続登記(名義変更)の手続きを進めることができます。

なぜ特別代理人が不要なのでしょうか?(利益相反に関する考え方)

法律上、親権者が子どもの代理人として行う行為が、親自身の利益になり、かつ子どもの不利益になる行為を「利益相反(りえきそうはん)行為」と呼びます(民法第826条)。この場合、子どもの権利を守るために家庭裁判所で「特別代理人」を選任しなければなりません。

過去の最高裁判所の判例(最判昭和42年4月18日等)では、利益相反行為にあたるかどうかは、「行為の客観的な性質や外形から判断する」とされています。
今回ご相談の「法定相続分での相続登記」は、単に法律で決められた当然の権利を保全する行為(保存行為)であり、客観的に見てお子様の財産を減らしたり不利益を与えたりするものではありません。したがって、利益相反行為には当たらず、特別代理人は不要となります。

【要注意】「遺産分割協議」をする場合は特別代理人が必要です
非常に間違いやすい点ですが、もし「遺産分割協議書を作成して、その結果として法定相続分と同じ割合にする」という場合は特別代理人が必要になります。「遺産分割協議」という行為自体が、親と子で財産を分け合う行為であり、外形的に利益相反行為とみなされるからです。協議を「する」か「しない」かで手続きが全く異なります。

法定相続分で「共有名義」にするリスクについて

特別代理人が不要だからといって、安易に「とりあえず法定相続分で共有名義にしておこう」と決めてしまうのは、後々のトラブルの種になるリスクがあります。法的な観点から、以下の点に十分ご注意ください。

1. 成人後に単独名義にする場合の手続き負担
親か子どちらかの単独名義にするには、将来お子さんが成人した後に遺産分割協議をおこない、登記申請をする必要があります。


2. 権利関係がさらに複雑化する(数次相続のリスク)
お子様が成人した後であっても、共有状態のままにしておくと、意見の対立で不動産を動かせなくなるリスク(共有物分割請求のトラブルなど)があります。さらに、将来お子様に万が一のことがあった場合、お子様の配偶者などが新たな共有者として加わり、権利関係がより複雑になってしまう問題も考えられます。

未成年者が関わる相続手続きは、「目の前の手続きをいかに簡単に済ませるか」だけでなく、「将来その不動産をどうしていくか」までを見据えて、最適な方法(法定相続分での共有にするか、特別代理人を立ててお母様の単独名義にするか等)を選択することが極めて重要です。

手続きの進め方や将来のリスク診断を含め、専門的な視点からアドバイスをさせていただきます。
今後の方向性について迷われましたら、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。