【相談事例】親の多額の借金で家族全員が相続放棄。空き家になる実家の管理義務はどうなる?

ご相談内容

先日、一人暮らしをしていた父が亡くなりました。遺品の整理をしていたところ、消費者金融や知人からの多額の借金があることが判明しました。預貯金などのプラスの財産よりも明らかに借金の方が多いため、子どもたち(兄弟全員)で家庭裁判所に「相続放棄」の手続きをしようと考えています。

そこで心配なのが、父が住んでいた実家の土地と建物です。全員が相続放棄をした場合、誰も相続しなくなるわけですが、空き家となった実家の管理や固定資産税の支払いはどうなるのでしょうか?老朽化してきているため、近隣に迷惑がかからないか不安です。

司法書士からの回答

借金が多額な場合、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行うことで、初めから相続人ではなかったことになり、借金を背負わずに済みます。固定資産税の支払い義務も、相続放棄が認められれば免れることができます。

しかし、一番ご不安に思われている「空き家となった実家の管理義務」については注意が必要です。
実は、2023年(令和5年)4月に民法という法律が改正され、相続放棄をした人の財産管理義務に関するルールが変わりました。ポイントは、亡くなった時にご自身がその実家を「現に占有していたかどうか(実際に住んでいたり、事実上管理していたかどうか)」です。

■ 実家を「占有していない」場合(別居していたなど)
ご相談者様のように、お父様が一人暮らしをされていて、ご自身は別の場所に住んでいた(実家を占有していない)場合は、相続放棄をすれば実家の管理義務(保存義務)は負わないことになります。

■ 実家を「占有している」場合(同居していたなど)
もし、お父様と同居していた場合など、実家を占有していた状態から相続放棄をした場合は、次の相続人、または裁判所に選ばれた「相続財産清算人」に実家を引き渡すまでの間、引き続きその実家を適切に保存する義務が残ります。

誰も管理しない空き家を完全に手放すには?

今回のご相談のケースでは別居されていたとのことですので、基本的にはご相談者様に管理義務は生じません。しかし、全員が相続放棄をして「所有者も管理者もいない空き家」が放置され、万が一、台風などで屋根が飛んだり塀が崩れたりして近隣住民に損害を与えてしまった場合、思わぬご近所トラブルに巻き込まれるリスクがゼロとは言い切れません。法的な責任や義務は無くても事実上のトラブルは起こりえます。

このような「誰も相続する人がいなくなった財産(空き家や借金)」を最終的に清算・処分するためには、家庭裁判所に「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」という人(地域の弁護士が選ばれます)を選任してもらう手続きが必要になる場合があります。
相続財産清算人が選任されれば、その清算人が空き家を売却してお金に換え、債権者に借金を返済するなどの手続きを行ってくれます。これにより、ご親族は完全にその不動産と手を切ることができます。

相続放棄は「家庭裁判所での手続きが終わればすべて安心」とは限らず、今回のような不動産の取り扱いや、次順位の相続人(お父様の兄弟姉妹など)への配慮など、専門的な判断が必要な場面が多くあります。
ご家族皆様の相続放棄の手続きや、その後の空き家の対応、相続財産清算人の選任申立てなどについて、法的なアドバイスとサポートをさせていただきます。
不安な点を一つずつ解消していくためにも、まずは当事務所にご相談ください。